理事長挨拶
この度,令和7・8年度の日本聴覚医学会理事長を拝命いたしました。ここにご挨拶申し上げます。
本学会は聴覚並びにその障害に関する研究の進歩と発展をはかることを目的としています。昭和26年(1951年)に行われた難聴研究会から発足し,5年後に日本オージオロギー学会に改組改称され,昭和63年(1988年)日本聴覚医学会となり,現在に至っています。ほぼ4分の3世紀の歴史をもっています。日本聴覚医学会の特徴は耳鼻咽喉科医師だけでなく,言語聴覚士,音響学の研究者など多領域にわたる専門家が共同で力を合わせる集団であることです。また学会の伝統であるブレない姿勢は社会の信頼として現れています。学会で定めた「聴力検査法の規準」は聴覚医学の分野だけでなく,社会的に活用されています。専門領域だけでなく,社会的役割を担っています。一方,この姿勢は,逆に若い研究者たちに堅い印象を与えていることも否定できません。学会の特徴である伝統を守る姿勢とその社会的役割を維持するとともに,親しみやすさや新規さの両面を備える必要があると考えています。
日本聴覚医学会と名称をかえてからの40年弱においても聴覚医学はめざましい発展をつづけてきました。誘発聴性反応検査の発達,遺伝性難聴など難聴の病態の解明,聴覚補償のための補聴器,補聴援助システム,人工内耳を始めとする人工聴覚器の発展が挙げられます。一方,国際生活機能分類の概念が普及するとともに,社会モデルが法制化するに伴い,聴覚障害の考え方が変化し,バリアフリーや社会制度の整備,共生社会の考えが一般的になるなど社会そのものも変化していっています。学会として,聴覚医学の立場から社会モデルにも対応していかなければなりません。
新しいことに取り組み,若い力を活かすことができる場の提供,社会福祉領域への貢献など,方向性をつけていきたいと考えています。歴代理事長の志を受け継ぎ,聴覚医学の進歩と日本聴覚医学会の発展に微力ながら尽力できるように努力します。何卒,ご支援を賜りますよう,よろしくお願いいたします。
一般社団法人 日本聴覚医学会理事長
中川 尚志