理事長挨拶
この度、2023・2024年度の日本聴覚医学会理事長に就任致しました。ここにご挨拶申し上げます。
令和2年初頭から新型コロナウイルス感染症が全国に拡がった影響で、令和2年の研究会は中止や延期、令和3年2月の聴力測定技術講習会も中止となりましたが、令和4年2月には施設実習を中止して従来の5日間から4日間に短縮の上で聴力測定技術講習会を開催し、また研究会も通常通りに再開できました。新型コロナウイルス感染症は我々の活動に未だに影響を与えていますが、そのような状況下でも令和3年は第66回日本聴覚医学会総会・学術講演会が昭和大学上條記念館にて小林一女会長のもとで、令和4年には第67回日本聴覚医学会総会・学術講演会がやまぎん県民ホールおよび山形テルサにて欠畑誠治会長のもとで、無事に開催されました。現地に参加された方も多く、活気のあるディスカッションが交わされ、学会の英気を感じることができたのは嬉しい事でした。
さて、本医学会の目的と役割は、聴覚に関する構造(解剖・組織)と機能(生理)、難聴の病理と病態生理、難聴の予防と聴覚保護、難聴疾患の診断と治療および障害の解明、聴覚障害に対するリハビリテーション手段の開発と効果の評価、聴覚障害による社会的不利の解明と福祉への貢献、と極めて多くの分野・領域にわたっており、そのことは現在も変わっておりません。本学会の大きな特徴として、耳鼻咽喉科医のみでなく、言語聴覚士、聴覚障害者教育の教育者などの会員も有し、聴覚障害や聴覚に関する諸問題に対して指針を定め、活動していく点が挙げられます。このためには聴覚医学の研究の推進や臨床への貢献が礎であり、研究から生まれた様々な知識、方法、診断、治療を社会で活用することが求められています。会員の皆様には、学術講演会への参加や機関誌であるAudiology Japanへの積極的な投稿をお願い致します。
令和4年の学術講演会の主題に聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder)が取り上げられたように新しい疾患概念が出てきていることに加え、新しい検査法や検査機器の改良も進み、解剖や聴覚生理においても新しい発見が続いています。このような背景から、今期は「聴覚検査の実際」を改訂することにしました。聴力測定技術講習会ではテキストとして用いられ、聴覚医学に関わる人が参考とする重要なものですので、時間をかけてしっかりと取り組みたいと考えています。また、難聴対策議員連盟などと密接に連絡を取り、社会実装にも継続して貢献する所存です。会員の皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本聴覚医学会理事長
山岨 達也