一般社団法人日本聴覚医学会 | Japan Audiological Society

日本聴覚医学会50年の歴史

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はじめに

写真1 日本オージオロジー学会史
Audiology Japan Supplement 1
(1985年)

 本学会の50年を振り返り,その概要を述べる。19851年(昭和60年)に創立30周年を記念して「日本オージオロジー学会史」が編纂されている。学会誌Audiology JapanのSupplement 1(1985年)として発刊されたものである(写真1)。多くの現会員はその存在すら知らない。現在では入手不可能な資料や写真も含まれており,貴重な記 録である。以下に述べる内容にはこの「日本オージオロジー学会史」からの引用が随所にあることをご了承賜りたい。従って,ここでは第31回~50回を振り 返るのみならず,本学会創立以来の軌跡を辿りたい。

 さて,本学会は日本耳鼻咽喉科学会の関連学会・研究会の中で最も伝統のある学会の一つである。当初は耳の疾患の多くが本学会の研究領域に含まれていた が,関連領域の専門化に伴い,日本前庭研究会(現日本めまい平衡医学会),オトマイクロサージェリー研究会(日本臨床耳科学会→現日本耳科学会),内耳生 化学研究会(日本基礎耳科学会→現日本耳科学会)などが設立され現在に至っている。

本学会創立の経緯

写真2 第1回難聴研究会のひとこま

 1951年(昭和26年)に第1回難聴研究会が東大において開催された。

 世話人は颯田琴次,西端驥一,大藤敏三,切替一郎,堀口申作,恩地 豊,そして幹事は堀口申作,恩地豊,大和田健次郎,岡本途也らの先達などであった。その後5年間,毎年11月に開催された。第1回の参加者は40名,第5 回は200名であった。

 写真2は第1回難聴研究会が東大医学部本館会議室で行われたときのスナップ写真である。東大の加我教授より拝借致したもので,つい 最近,亡き颯田琴次先生のお宅から発見されたとのことである。

写真3 日本オージオロギー学会

 本学会は現在「日本聴覚医学会」であるが,表1に示す如く3回名称が変わっている。

第5回の難聴研究会が第1回「日本オージオロギー学会」 と改称され,1956年(昭和31年)に慶應義塾大学で開催され,会員数約300名,年会費200円であった。これをもって本学会の第1回とし,その後 「オージオロジー学会」が永く続き,1988年(昭和63年)現「日本聴覚医学会」となり,本年2005年(平成17年)に50周年を迎えた。

表1 本学会名の変遷

写真4 日本オージオロジー学会

1951年 昭和26年 難聴研究会
1956年 昭和31年 日本オージオロギー学会
1959年 昭和34年 日本オージオロギー学会
1988年 昭和63年 日本聴覚医学会

 写真3,写真4は,懐かしいオージオロギー学会並びにオージオロジー学会の立て看板であり,颯田琴次,切替一郎両先生の勇姿(写真4)である。

 さて,本学会創立以来のモットーは「学会講演会は難聴研究会の時代と同様,時間をかけ自由な討論を重視し,各種の特別企画は行わないことを基本的に申し 合わせ,一般演題を重視する」ことである。この姿勢は基本的に現在まで本学会の伝統となっている。そのため,歴代会長は一般演題を重視すると共に,主題あ るいは指定演題として種々のタイトルを挙げ演題を募集し,集中的にデスカッションしてきた。その時代時代の要求する,または会長が重視するテーマであり, 時代の変遷を知る上で大いに参考になる。

学会誌について

 本学会の機関誌の名称は1958年(昭和33年)に創刊されて以来一貫して「Audiology Japan」である。1958年(昭和33年)から年1回発行,1960年(昭和35年)から年4回,そして1970年(昭和45年)から年6回発刊され現在に至っている。

各種委員会について

 本学会は日本耳鼻咽喉科学会と多くの社会医学的側面を共有している。そのため,過去50年間,時代の要求に従って,企画委員会,広報委員 会,難聴対策委員会,福祉医療委員会,研究会委員会,用語委員会,JIS/ISO対策委員会,音響学会JIS委員会,JIS改訂委員会,骨導0dB委員 会,保険医療委員会,突発性難聴診療ガイドライン検討特別(Ad-hoc)委員会,検査基準委員会,国際委員会,医療言語聴覚士資格制度推進協議会など, 種々の委員会が持たれた。

聴力測定法の規準

写真5 「聴力測定法の規準」班研究会のひとこま

 さて,話は少々戻る。50年の歩みを整理致し種々感銘を受けたが,「聴力測定法の規準」出版の件も是非ご紹介致したい。第3回難聴研究会が 母体となり,1954年(昭和29年)文部省科研・総合研究「聴力測定法の規準」―代表者:颯田琴次―が認可されて3年間に計8回の班会議が開催さ れ,1956年(昭和31年)に「聴力測定法の規準」が出版された。

 この班研究において,現在のオージオメータ,並びに標準純音聴力検査における測定法が確立され,さらに現行のオージオグラムの形式が決定さ れた。また,語音明瞭度の測定方法の基礎が確立され,その後の57A・B,67A・B語表へと改良されて現在に至っている。

写真6 「聴力測定法の規準」(1956年)

写真5は班研究のひとこまであ り,写真6は「聴力測定法の規準」の表紙である(30年史より)。なかなか手に入らず,今回立木孝顧問より本学会事務局にご寄付頂いた。

図1 「聴力測定法の規準」(1956年)に示されたオージオグラム

 図1は「聴力測定 法の規準」に記載されているオージオグラムである。「聴力損失」,「周波数」,数字などの文字は手書きである。

関連研究会の変遷について

 これまで,騒音研究会,聴覚心理研究会,ERA研究会,補聴研究会,耳音響放射研究会,耳鳴研究会,耳閉塞感研究会など,各種研究会が開催 されてきた。「耳鳴研究会」は「耳鳴りと難聴の研究会」に発展し,最も歴史ある「ERA研究会」は2006年(平成18年)より「ERA・OAE研究会」 として活動を続けている。また,2004年(平成16年),「内耳ひずみ研究会」が設立され,2007年(平成19年)には「聴覚アンチエージング研究 会」が設立された。

聴力測定技術講習会の変遷

 第1回の聴力検査技術者講習会(現,聴力測定技術講習会)は1965年(昭和40年)5月10日~15日まで慶應大学で開催された。受講者 は26名であった。その後原則として年1回,東京で開催されてきた。年2回行った年もある。また,大阪市,名古屋市,福岡市,盛岡市,新潟市などでも開催 されたことがある。現在,受講者総数は4,000名を越え,2006年度(平成18年度)で通算第70回となる。現在は一般コースの他に,中級コース,医 師コース,さらには2005年度(平成17年度)より新生児聴覚検査コースが加わり,ますますその重要性が大である。

耳の日創立について

 実質的な「耳の日」は1955年(昭和30年)3月3日難聴研究会によって行われた。この年は「聴力保護の日」とし,関係者らによって難聴 に関する無料相談が行われた。その翌年,1956年(昭和31年)5月20日第1回「耳の日」が日本耳鼻咽喉科学会,日本医師会などの主催によって行われ た。第2回(昭和32年)以降は3月3日に実施し,現在に至っている。

補聴器適合判定医師研修会について

 第1回研修会は1983年(昭和58年)国立身体障害者リハビリテーションセンターにおいて開催された。関係各位の熱意により厚生省の予算 化を得,日本耳鼻咽喉科学会と日本オージオロジー学会(日本聴覚医学会の旧名称)の後援となった。岡本途也先生,大和田健次郎先生を中心に研修カリキュラ ムが作成された。

国際聴覚医学会

写真7 IInd Extraordinary Congressのプログラム

 1992年(平成4年)8月31日~9月4日岩手県盛岡市において立木孝会長のもとに故高円宮様ご夫妻のご来臨を仰ぎ第21回国際聴覚医学会が盛大に開催された。

 なお,1965年(昭和40年)に東京で国際耳鼻咽喉科学会(IFOS)の開催と前後して,10月20~21日にIInd Extraordinary Congress of the International Society of Audiologyが京都にて開催された。

 後藤光治会長,切替一郎副会長,中村文雄副会長,さらに森本正紀事務局長,そして太田文彦幹事という体制で準備運営された。海外からの登録会員221名,同伴夫人131名が33ケ国より参加した。本邦からは317名の参加を得た。

写真8 IInd Extraordinary Congressの開会式のひとこま

 前年の1964年(昭和39年)には東京オリンピック,その前年には東海道新幹線が開通という節目の時代であった。

写真7はそのプログラムの表紙にて,本庄巖会員による和紙に和綴じの純日本風のデザインである。写真8は開会式の模様である。

ホームページ立ち上げ

 本学会のホームページは2002年(平成14年)に立ち上げたが,現在も関係各位が内容を充実させるべく努力している(図2)。会員諸氏を含め多くの方々がアクセスして頂くことを希望する。(https://audiology-japan.jp/

おわりに

 以上,本学会の50年間を振り返り,その歴史を概説した。短い紙面のなかで全てを網羅しお伝えすることは私の能力を超えていた。どうか創立 50周年記念誌(Audiology Japan 49巻 補1号「日本聴覚医学会50年史」, 2006)を熟読されたい。50周年を迎えた今,正に本学会は曲がり角,ターニングポイントに差し掛かっていると考える。諸先達の偉業を継いで会員諸氏が さらに充実した学会となるよう盛り立てて頂けると信ずる。

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